薬膳について思うこと

最近、緑書房から出ている『薬膳の基本』という本を図書館で見つけました。

著者は辰巳洋さんという中国人の方で、北京中医学院を出た後、軍医や医学雑誌の編集者などされていたそうです。現在は本草薬膳学院学院長をされているようです。

 

そんな訳で『薬膳の基本』は非常に本格的な良書です。

本気で体を調えるための本格レシピ集!といった感じで、理論も漢方なみにしっかりしています。

料理の写真も美しく、何というかレシピの説得力強いな、という感じがします。

レシピが充実しているので中医学の心得のない方でも、作って食べてみて

その効果を実感できることと思います。

 

中国では「食医」といって、料理人が最高の医師だとされていました。

漢方薬の医師がその次で、鍼灸師はその次にきます。

「上工治未病」といって素晴らしい医者はまだ病になっていない状態を治す人と

言われました。つまり「普段の生活や食事で病を治せる人が一番のお医者さんなのだ」

ということです。

 

早速、ほくほくしながら梅雨のむくみをとる「とうもろこしのスープ」と体の熱を冷ます「苦瓜の肉詰め」、

その他の料理もいくつか作ってみました。

結構、素朴な作り方で出汁もとらなかったり味付けが塩だけだったりするので、美味しいのかなこれ?

といった感じで恐る恐る試してみたのですが、これが素晴らしく美味しいのですね。

「良薬口に苦し」といいますが、これは漢方薬に関しては結構でたらめで

体に合っているものは非常に美味しく感じられるのですが、

きっと体にあっていたのもあるのでしょう。

 

ああ、これが薬膳か、というような、感動がありました。

体を受け止めてくれるような、何と言ったらいいのか

説明は難しいのですが非常に全体のバランスがいいのです。

料理に力や自信のようなものがあって

これは作る段階でしっかりと練り込まれたレシピなのではないか?と思いました。

味も作り方も余計なものがなくシンプルかつクリア、そこに格好良さみたいなものを感じるのです。

この本のレシピにすっかり惚れてしまいました。

 

私も普段、自分の体でハリ灸の効果を色々試してみていますが、基本の体を作っているのは

「食事」なので、この食事を変えたときの効果というのが(哀しいかな)やはり一番、強力です。

体の基礎力を調えた上で、ハリ灸を施したり漢方薬を飲むと効果がテキメンに違います。

そんな訳で、『薬膳の基本』のレシピを夕飯にした翌朝は起きたときに元気のレベルが違いました(^_^)

「食医」が一番、位が高かったというのも素直に納得ですね。

 

薬膳でも医療でも、東洋医学の根っこにあるのは「道教」の神仙思想なのだろうと思います。

道教では輪廻を認めないので、非常に現世利益的な考え方をします。

人間の自然な欲望も認めるので、あまり禁欲的にならないです。

薬膳料理は「体にいいってことはマズイんでしょ」という台詞には当てはまらない、

むしろ料理によっては贅沢で美食の部類に入りそうな勢いです。

それで体が丈夫になり、健康になる。

一歩間違えると生薬を乱獲したり、かなり自己中心的なものにもなりえますが

まず家庭料理で利用するくらいではそんなことにはならないですし、

もっと普通に広まればいいのにな~と思います。

 

東洋医学、中医学を学ぶにつけ、こういうものを作り上げた中国というのは本当にすごいと思います。

ミステリアスかつ魅力的な憧れの国です。